天草製造の「匠」たち

接着工程 / 木戸雅士
接着工程 / 木戸雅士

いかに良い「顔」を作るか

船体とデッキの接着工程を担当しています木戸雅士です。
入社して32年で、この仕事を受け持ってからは22年ほどになります。自分で納得できる仕事ができるようになるまでには約10年くらいはかかったかな。
僕たちの仕事はハルとデッキをカップリングする仕事で、カップリングした後にJB作業や接着ペーストを塗布する工程なんですけども、一番神経を使い気になるのが、デッキとハルを嵌合する時の高さや前後位置を合せる時です。
(JBとは「Joint Bonding」の略で 樹脂を含ませたガラス繊維で嵌合部を接着すること)

以前は型作りの精度の課題があり、デッキが小さかったりするとハルと嵌合できなかったりして、大変だったのですが、今は設計のクオリティやオス型がNC加工になったりメス型の製作精度が高くなったので、ほとんど難なく嵌合できる様になってますよ。
船造りは全ての工程でやり甲斐があると思いますが、カップリング作業では船体を保護するガンネル材を巻く時じゃないですかね。その船の顔が見えてくるんですよね。その顔を如何にして、いい顔を作っていくかということが、やり甲斐があるというか。そういう感覚で仕事していますね。

他のカップリング作業としては、JBを貼る。
ただ、貼るのじゃなくて、そこから水が漏れたら駄目。もう水が漏れたらもうこれは船じゃないわけですから。船っていうのは水が漏れない。海に確実に浮かぶ。これが船だと、僕らは思っています。物入れなど空間の狭いところへ入り込んでのJB作業も確実に行うことは、まあ難しいですよね。
また、船を保護するガンネルはただ取付けるだけじゃなくて、専門的には一通り見ることが重要です。芯を一本通すことです。船の形とガンネル材が一体となって狂いがない状態へするために、日々作業のクオリティを高めることが難しいですね。何年経っても勉強です。

日頃から心掛けていることは「ミスを犯さない」。
これはもう経験もあるけども、図面を見ることはもちろんのことですが、過去の不具合事例などを書留めたものを確認しています。例えば、生簀にJBを貼るにしても、ここは何プライだとか、船によって違いもあるので、ここはどのくらいの接着ペーストを塗布したらいいかというのを頭に入れて作業を行っています。

自分で納得した作業をすると、あ!これ、いい顔になったな。と思った時が嬉しいです。それが、やりがいなんですかね。
道具の持ち方とかハサミの入れる方向や切り方とか、ローラーの使い方などにも沢山の工夫をしてます。
後はもう、経験ですよね。これをいかに積み重ねて、慣れてくるかが勝負だと思っています。
この会社は魅力いっぱいですよ。魅力一杯だからその魅力を若い人がどんどん自分で見つけて自分が成長できると僕は思います。そうすると自分が成長しているなと思えると仕事ももっと楽しくなると思いますね。

接着工程 / 木戸雅士